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会長就任挨拶

日本介護福祉学会第10期会長 加瀬 裕子

 第29回日本介護福祉学会が神戸女子大学にて開催され、無事終了いたしました。大会長泉妙子先生、実行委員長津田理恵子先生、事務局長木村あい先生を始め関係者各位に厚く御礼申し上げます。

 大会において総会が開催され、第10期役員体制が承認され、私が会長を務めることになりました。私は、本学会の創立メンバーではありますが、その後、学際的な学会に主な活動の場を移し、日本介護福祉学会には2年前に理事として戻ってまいりました。

 私が、学際的な学会を主な活動の場といたしましたことには理由があります。看護職が80%以上を占める学会で介護や福祉の専門性を示し、プレゼンスを高めることを私の使命と考えたからです。私は、「介護福祉とは、身体的あるいは精神的事由により日常生活を営むことに困難のある人が、普通の市民レベルの生活を送ることを、本人と共に実現する専門的支援である」と考えています。

 社会福祉との違いは、社会福祉の対象が「社会的な機能不全(social dysfunction)を起こしている人々であることに対し、介護福祉の対象は身体的・精神的な状況により生活が困難(physical dysfunction)である人々だということです。障害を負っておられる方々のなかには、自分に適した社会的・人的環境を整え、自立して生活している人もたくさんいます。しかし、社会的に自立している人々でも何らかの介助を受けなければ、日常的な生活ができないことがあります。

 それでは、看護との違いを考えてみましょう。看護の対象は「療養や健康についての支援が必要な人」です。介護福祉と看護が最も異なることは、介護福祉が「日常生活」を「普通の市民レベルの生活」に近づけることを目標にすることだと思います。日常生活は、療養や健康だけで構成されません。また、「普通の市民レベル」というところも大切で、現在の同年齢の人々が送っているレベルの暮らしができるようになることを目指します。

 例えば、学校に行くことが困難であれば、身体的なリハビリテーションから社会サービスの利用まで、介助の可能性や手段を考えたり、学校に行くための衣食住の状態が良好なレベルであるかを考えます。介護福祉のアセスメントの範囲は、生活全般に及ぶのです。私は、スウェーデンに暮らす女性障害者の事例を知って驚きました。24時間の介助が必要な人なのに、20歳になった時に実家を出て、アパートで一人暮らしを始めたのです。普通の20代の女性は、そのように暮らしているからだそうです。

 日本では、スウェーデンのような介護は実現できないかもしれませんが、ADLやIADLにおいて自己ケア能力や自己決定能力を拡大する支援により、介護を受ける人の生活も「普通の市民レベル」に近づくのではないでしょうか。

 会員の皆様とともに、「介護福祉」の醍醐味を探求したいと思います。よろしくお願いします。